海洋プラスチックごみ問題啓発紙芝居 「プラごみおばけがあらわれた!」
音声付き動画で視聴できるようになりました!
2022年7月7日
札幌市ごみ減量実践ネットワークと協働で、北海道容器包装の簡素化を進める連絡会が、海洋プラスチックごみ問題を啓発するオリジナル紙芝居を製作しました。
ページの1番下で画と読み文(PDF)をそれぞれダウンロードできるようになっています。
皆さまの啓発活動に使っていただければ幸いです。
北海道容器包装の簡素化を進める連絡会
札幌市ごみ減量実践ネットワーク
「きれいな貝はないかな?」
海辺にやってきた、りいちゃん。
キョロキョロ歩いていると、少し先に、何かとうめいなものがキラッと光りました。
「めずらしい!とうめいな貝!」
急いで拾ってみると・・・
それは、少しつぶれたペットボトルでした。
「なーんだ。これ、ペットボトルだ」
りいちゃんは、そう言ってそれをポイっとすてました。
その時です。
「ちょっとまったあー!!」
おこったような低い声が、後ろからひびきました。
「えっ、何!?」
りいちゃんがふり返ると、だれもいません。
「こっちだってば!」
その声は、りいちゃんの足元から聞こえました。
それは、さっきすてたペットボトルの声だったのです。
「よくも、すてたなあ!」
ペットボトルはそう言いながら、むくむくと大きくなり・・・。
あっという間にりいちゃんより大きくなって、その体には、ところどころ、ヒビが入っていました。
「よくもオレをすてたなあ~っ!うおーっ!」
おばけになったペットボトルが、おそろしい顔をして、りいちゃんにせまってきました。
「わあーっ!」
りいちゃんはびっくりして、持っていた貝のふくろを放り投げました。
(にげなきゃ!)
あわてて走り去ろうとした、その時
「りいちゃん!わたしのこともすてちゃうの?」
今度は、か細い、悲しそうな声がしたのです。
「え?」
もう一度ふり帰ると、ペットボトルの横で、りいちゃんより大きなビニールぶくろが、大つぶのなみだを流していました。
よく見ると、さっきまでりいちゃんが持っていたビニールぶくろと、同じもようでした。
「こんどは、ビニールぶくろがおばけになっちゃった!」
りいちゃんが、にげるのもわすれてポカンとしていると
「まあまあ。泣いてもしょうがないっすよ」
と、岩のかげから別の声がしました。
ひょいっとあわられたのは、ペラペラのうすくて細長いふくろのおばけ。
なんだか見覚えのある形をしています。
「もしかして・・・ストローのふくろ?」
りいちゃんが聞くと、
「そうっす。でも中身のストローとは、はぐれちゃったんすよ」
長ひょろいおばけが答えました。
「そんなことよりなあ・・・!」
ペットボトルおばけが、さらにぐいっと近づいてきました。
「なんでおれをすてたんだあ」
「そうよそうよ!」
プラスチックごみのおばけたちにせめられて、りいちゃんは、おおあわてでさけびました。
「さっきはごめん!でも、そもそも、なんでみんなこんなところにいるのよう~!」
すると
「なんでって・・・なんでって・・・それは・・・うおーん!」
さっきまで、ぷんぷんおこっていたペットボトルおばけが、泣きながら、語り始めました。
「オレはピカピカのペットボトルとして生まれて、スーパーへ運ばれたんだ。
オレを買った人は、キャンプにオレを連れていってくれた。山も川もきれいで楽しかったよ。
ところが帰る時、
『にもつになるからじゃまだな』
そう言って、その人はオレをすてようとした。
だけど近くのごみ箱がいっぱいでさ。
どうするのかと思ったら、オレをごみ箱のわきにそっと置いたのさ。
ところがさ、風がピューピューふいてたもんで、オレはコロコロ転がった。あっちへ飛ばされ、こっちへ飛ばされ・・・ついに川にドボン!
オレは岩にぶつかり、滝から落ち、さらに、流され、流されて・・・。気が付いたらここにいた」
「た、大変だったねえー」
りいちゃんは、体中キズだらけのペットボトルに同情しました。
「ピカピカだった体ももうボロボロだし。もうすぐオレも、くだけて体がバラバラになるかもな」
「えっそうなの?!」
「そうだよ。キミの足元をよく見てみなよ」
りいちゃんは砂を手ですくってみました。
よーく顔を近づけてみると、砂の中に、砂でも貝でもない、いろいろな色のかけらがまじっていました。りいちゃんの小指のつめより小さいものです。
「これ、なあに」
りいちゃんが聞くと、ストローのふくろおばけが答えました。
「マイクロプラスチックっす。ぼくたちのなかまがたくさん、こんなふうになってるんす」
「あちこち流されているうちに体がこわれて、どんどんちいさくなって、バラバラになってしまうのよ。海の中には、もっとあるわ」
「せめて、ちゃんとすててくれたら、工場に運ばれて、また生まれ変わることができたのに・・・」
ペットボトルおばけが、ためいきをつきながら言いました。
りいちゃんは、学校の先生に聞いたことを思い出しました。
もやせるごみは、もやせば灰になっちゃうし、もやせないごみは、うめたててしまうけど、「容器包装(ようきほうそう)プラスチック」などは、もういちど「資源(しげん)」にするために分けて集めているのだと。
そうすると、ペットボトルがたまごのパックになったり、プラスチックのふくろが荷台のパレットになったりして、また活やくできるのです。
「でもさー、オレ、できれば・・・ちがうプラスチックに生まれたかったな。こんな、使いすてのものじゃなくてさ。カッコイイ車の部品とか!」
「わたしは、かわいいマイバッグに生まれたかったわ。そうすれば、いつもお出かけに連れていってもらえて、よごれたら、きれいにあらってもらえただろうし・・・。」
「ボクは、ま、本当に必要なんだったら、一回きりの入れ物でもよかったんすけど。『ボクは、大事なものを守ってる~!めちゃめちゃ役に立ってる~!』って感じられるじゃないっすか」
「とにかく、すぐすてられちゃって」
「せめて、また資源にしてもらうこともされないで!」
「すてられてからも、じゃまものあつかいされるなんて!」
「そんなのいやだ!」
プラごみおばけたちが、いっせいにさけびました。
りいちゃんは、プラごみおばけたちが本当に気のどくになりました。
そして、少し考えて、決めました。
「わかった!わたし、みんなのこと、連れて帰る!」
「えっ、りいちゃん、本当?」
「うん!そして、うちに帰ったら、どうすればいいか調べてみる!
今からでも資源ごみに出せるのかな?もしだめでも、こんなところに放っておかない。ちゃんと調べて、みんなを分けて出すから!」
「ホントに?やったあ!」
プラごみおばけたちは大よろこび。
「あ、りいさん。ねんのためなんすけど。
出す時は、くれぐれもしーっかりと、ふくろをしばって出してくださいよ。そうしないと、特にボクみたいな小さいのは、ふくろから落っこっちゃうことがあるんで」
「わかった!」
「よろしくっす!」
「りいちゃん、ありがとう。最後に、もう一つだけお願いしてもいいかな」
今は、とってもやさしい顔になった、ペットボトルが言いました。
「うん。なあに?」
「あのさ、いくらりいちゃんが、今日、オレたちを拾ってくれても、他にもオレたちの仲間が、まだあちこちにいる。
きのうも今日も、きっとたくさんたくさんすてられて、世界中に散らばっている。
りいちゃん1人じゃ、とても全部を拾うことはできない。
だから・・・このことをみんなに伝えてほしいんだ。りいちゃんみたいな子が1人ふえて、またその子が他の人に話して、そうやって仲間がふえていったら・・・もう、オレたちみたいなごみおばけがいなくなると思うんだ」
「わかった!約束する!」
りいちゃんは、きっぱりと言いました。
新学期。
学校で、りいちゃんは夏休みの自由研究を発表していました。
①プラスチックは分かいされずにずっと残る
②太陽の光や波で、こわれて小さくなる→マイクロプラスチック
③かんきょうに大きなえいきょう(魚にも鳥にも動物にも、人間にも)
「だから、わたしたちは、プラスチックをむだ使いしないで、大切に使い、すてるときはちゃんと気を付けなければなりません」
学校が始まって、最初の日曜日。
「今日はどんな貝がみつかるかな?」
りいちゃんは、また海辺にいました。手にはかわいいマイバッグ。
「今日も暑いな」
りいちゃんは、バッグから水筒を出して、水をごくごく飲みました。
太陽の光を受けて、青い青い海がキラキラとかがやいていました。